【連載第5回・完結編】私のフカセ・カゴ釣りタックル全公開 – カゴ釣り用リール編
連載最終回となる第5回は、カゴ釣り用のスピニングリールについてご紹介します。私が使用しているのは、シマノステラSW 14000PG、ステラSW 8000HG、ツインパワーSW 8000PG、そしてスフェロスSW 6000HGの4機種です。
カゴ釣りに求められるリールの性能
カゴ釣りは、重い仕掛けを遠投し、ブリやヒラマサといった大型青物を相手にするハードな釣りです。リールには以下の性能が必須となります。
- 大型青物の強烈な走りに耐える剛性と耐久性
- 十分なライン容量(PE2〜4号を200m以上)
- パワフルな巻き上げ性能
- 過酷な磯環境に耐える防水性能
- 長時間の使用でも疲れにくい操作性
これらすべてを満たす必要があるため、カゴ釣りのリールは大型で高性能なものが選ばれます。
シマノ ステラSW 14000PG – 大物専用の最高峰
【基本スペック】
- 番手:14000
- ギア比:4.9
- 自重:675g
- 最大ドラグ力:25kg
- 実用ドラグ力:18kg
- 巻取長:106cm/ハンドル1回転
- ベアリング数:13+1
- 糸巻量:PE 6号-300m、8号-200m、10号-165m
- ハンドル長:80mm
ステラSW 14000PGは、私のカゴ釣りタックルの中で最強の一本です。ヒラマサ天剛2 Hとの組み合わせで、10kg超のヒラマサを本気で狙う時の選択肢となります。
PGギア比のパワー
PGは「パワーギア」の略で、ギア比4.9という低速ギアを意味します。巻取長は106cmと短めですが、その分巻き上げパワーが圧倒的です。
大型青物とのファイトでは、走りを止めた後に「グリグリと巻いて寄せる」作業が必要になります。この時、PGの巻き上げパワーが真価を発揮します。ロッドを絞り込んだままでもラインを巻き続けられる力強さは、大物とのやり取りに大きなアドバンテージをもたらします。
XXタフドラグの信頼性
14000番にはXXタフドラグが搭載されています(8000番はXタフドラグ)。従来は下側にのみ大型ワッシャーが入っていましたが、XXタフドラグは上下両側でサンドイッチする構造になっています。
ドラグ耐久力の飛躍的向上 大物とのファイトでドラグを出される場面は何度もあります。XXタフドラグは、従来と比べて明らかに耐久性が上がっており、50kgクラスのキハダマグロとのファイトでも安定した性能を発揮します。
ヒートシンクドラグによる放熱 14000番はヒートシンクドラグを採用しており、スプールやラインが熱を持ちにくくなっています。走る魚との長時間のファイトでも、ラインの熱劣化を防ぎます。
インフィニティドライブの巻き上げパワー
2019年モデルから搭載されたインフィニティドライブは、ステラSWの革新的な技術です。従来のリールと比べ、初動から終わりまで一貫してスムーズかつパワフルな巻き上げを実現します。
大型青物を掛けた後、魚が止まったり横を向いたりしたタイミングでグリグリ巻けるパワーは、勝負を早くしてくれます。特にランディング直前、船や磯際での攻防では、巻きの強さ・軽さが重要です。
IPX8相当の防水性能
ステラSWは、ボディ・ドラグノブ・ラインローラーをはじめ、随所にシーリングを施すことで水の侵入経路を遮断しています。特にボディ・ストッパー部はIPX8を達成しており、過酷な磯釣り環境でも高い信頼性を発揮します。
磯釣りでは常に海水飛沫にさらされます。従来のリールは内部に海水が浸入し、錆びや動作不良の原因になっていました。ステラSWの防水性能は、この問題を大幅に改善しています。
使用シーン
- 10kg超のヒラマサ専用
- 大型青物の本格狙い
- 離島遠征や荒磯でのパワーゲーム
- PE6号以上を使う本気の大物狙い
適合ロッド
- ヒラマサ天剛2 H(ベストマッチ)
シマノ ステラSW 8000HG – 万能主力機
【基本スペック】
- 番手:8000
- ギア比:5.6
- 自重:625g
- 最大ドラグ力:25kg
- 実用ドラグ力:18kg
- 巻取長:107cm/ハンドル1回転
- ベアリング数:13+1
- 糸巻量:PE 3号-410m、4号-300m、5号-250m
- ハンドル長:75mm
ステラSW 8000HGは、カゴ釣りの主力として活躍する万能サイズです。HG(ハイギア)のギア比5.6は、パワーとスピードのバランスが絶妙で、あらゆるカゴ釣りシーンに対応できます。
8000番専用ローターの革新
2019年モデルの最大の進化は、8000番専用のコンパクトローターの採用です。従来は8000・10000・14000番のローターが共通サイズでしたが、8000番のみローターをコンパクト化しました。
専用ローターのメリット
- 回転慣性が20%低減
- ローターが一回りコンパクトで軽量
- 遠心力が減少し、手がブレない
- ローターを動かす力が少なくて済む
- ハンドルを軽く持てるため感度が向上
実際の使用でも、この専用ローターの恩恵は計り知れません。ジギングでジグを操作している時も、カゴ釣りで仕掛けを巻き上げている時も、ローターがブレずに安定した巻きを実現します。
デメリット 専用ローターの採用により、10000番とのスプール互換性がなくなりました。しかし、そのデメリットよりもプラスの方がはるかに大きいと感じています。
Xタフドラグの性能
8000番にはXタフドラグが搭載されています(XXタフドラグは10000番以上)。滑り出しが非常に滑らかで、ドラグ値の安定性に優れています。
カゴ釣りでは、ドラグをある程度締め込んで使用します。滑り出しが悪いとPEラインが高切れしたり、体を持っていかれて転倒するリスクがあります。ステラSW 8000HGのドラグは、締め込んだ状態でも滑り出しが滑らかで、安心してファイトできます。
インフィニティループによる飛距離向上
2019年モデルから搭載されたインフィニティループにより、ラインがより緻密に巻き込まれるようになりました。
インフィニティループのメリット
- 飛距離が向上
- キャスト時のバタツキが軽減
- ラインの引っかかりがなくスムーズに放出
- ドラグの滑り出しも向上
密巻きは大型魚がヒットした時にラインが食い込むリスクもありますが、2スピードオシュレートシステムにより完全な平行巻きではなく、絶妙なピッチに設定されています。これにより、キャスト時もスムーズ、ドラグも滑らかに作動します。
使用シーン
- 通常のカゴ釣り全般(メインロッド)
- 中型青物(メジロ、ワラサ)対応
- 遠投性能とパワーのバランスが必要な時
- PE3〜4号を使うオールラウンド
適合ロッド
- カゴスペシャルⅣ 3.5号(ベストマッチ)
- ヒラマサ天剛2 H
- 汐来坊2 MH
シマノ ツインパワーSW 8000PG – コスパ最強の選択
【基本スペック】
- 番手:8000
- ギア比:4.9
- 自重:635g
- 最大ドラグ力:28kg
- 実用ドラグ力:20kg
- 巻取長:94cm/ハンドル1回転
- ベアリング数:11+1
- 糸巻量:PE 4号-300m、5号-240m、6号-200m
- ハンドル長:75mm
ツインパワーSW 8000PGは、ステラSWの性能を継承しながら、より手頃な価格を実現したモデルです。私はこれをステラSW 8000HGと使い分けています。
ステラSWの技術を継承
2021年モデルのツインパワーSWは、インフィニティドライブやヒートシンクドラグなど、ステラSWの強さを受け継ぐ機構を惜しみなく搭載しています。
主な共通技術
- インフィニティドライブ:ステラと同等の巻き上げパワー
- ヒートシンクドラグ:熱ダレによるドラグ力低下を防止
- ラインローラー防水:防水性能が大幅に向上
- HAGANEギア:耐久性の高い冷間鍛造ギア
実際の使用感は、目をつぶって使ったらステラSWと間違えるほどです。リーリングはとても軽くて力強く、ステラSWと同じ感覚で使えます。
PGギアの使いどころ
8000PGは、ギア比4.9のパワーギアモデルです。巻取長は94cmと短めですが、巻き上げパワーに特化しています。
PGの特徴
- テクニカルで繊細なジグアクションが可能
- プレッシャーの高いポイントでスレた魚を誘い出す
- 巻き上げはパワフル、根回りの攻防でも主導権を渡さない
ステラSW 8000HGとの使い分けは、状況によって行っています。手返しを重視する時はHG、パワー重視の時はPGという選択です。
ステラSWとの違い
ボディ構造の違い
- ステラSW:オールアルミ合金製
- ツインパワーSW:ボディの半分がCI4+(炭素繊維強化プラスチック)
ツインパワーSWは、リールフット側がアルミ、反対側がCI4+というハイブリッド構造です。この違いにより、価格が約半分になっています。
ベアリング数の違い
- ステラSW:13+1個
- ツインパワーSW:11+1個
ベアリング数は2個少ないですが、実用上の差はほとんど感じません。
剛性感の違い オールメタルボディのステラSWの方が剛性感は高いですが、ツインパワーSWも十分な剛性を持っています。10kg超のブリを掛けても、ボディの歪みはあまり感じません。
価格差
- ステラSW 8000HG:約11万円
- ツインパワーSW 8000PG:約6万円
価格差は約5万円。初めてカゴ釣りを始める方や、コストを抑えたい方には、ツインパワーSWが最適な選択です。
使用シーン
- 通常のカゴ釣り(ステラの予備機として)
- パワー重視のジギング
- スロージギングやロックショア
- コストパフォーマンスを重視したい時
適合ロッド
- カゴスペシャルⅣ 3.5号
- 汐来坊2 MH
シマノ スフェロスSW 6000HG – 実戦派のエントリーモデル
【基本スペック】
- 番手:6000
- ギア比:5.7
- 自重:425g
- 最大ドラグ力:20kg
- 巻取長:101cm/ハンドル1回転
- ベアリング数:5+1
- 糸巻量:PE 2号-300m、2.5号-230m、3号-190m
スフェロスSW 6000HGは、コストパフォーマンスに優れた実戦派のカゴ釣り用リールです。基本性能はしっかりしており、ドラグ性能やギアの耐久性も十分です。
実用十分な性能
価格は約2万円とステラSWの約1/5ですが、カゴ釣りに必要な基本性能は十分に備えています。
搭載技術
- HAGANEギア:耐久性の高い冷間鍛造ギア
- Xプロテクト:ボディとラインローラーの防水機構
- Xシップ:回転の軽さと耐久性を両立
ステラやツインパワーほどの高性能ではありませんが、中型青物や大型グレとのやり取りには十分対応できます。
6000番というサイズ
6000番は、PE2〜2.5号クラスを扱いやすく、カゴ釣りの入門サイズとしても最適です。自重425gという軽さは、長時間の使用でも疲れにくいメリットがあります。
適合する状況
- 近距離のカゴ釣り(汐来坊2との組み合わせ)
- 大型グレ狙い
- 中型青物(メジロクラスまで)
- 荒場や根ズレのリスクが高いポイント
使い分けの戦略
私がスフェロスSWを使う場面は、以下のようなシーンです。
ステラやツインパワーを使いたくない状況
- 天候が悪く、リールが酷使される日
- 根ズレのリスクが非常に高いポイント
- 磯際の狭い場所での近距離戦
- 予備機として
高価なステラSWやツインパワーSWを傷つけたくない場面で、スフェロスSWは気兼ねなく使えます。基本性能が しっかりしているため、実釣で不満を感じることはほとんどありません。
使用シーン
- 近距離カゴ釣り
- 荒天時や過酷な条件下
- エントリーユーザーの最初の一台
- 予備機として
適合ロッド
- 汐来坊2 MH(ベストマッチ)
- カゴスペシャルⅣ 3.5号
4機種の使い分け戦略
私のカゴ釣りでは、この4機種を以下のように明確に使い分けています。
大型ヒラマサ専用 → ステラSW 14000PG
10kg超のヒラマサを本気で狙う時の勝負リール。PGのパワーとXXタフドラグ、ヒートシンクドラグで大物を確実に仕留める。離島遠征や記録狙いの釣行で使用。
通常のカゴ釣り主力 → ステラSW 8000HG
あらゆるカゴ釣りに対応できる万能リール。8000番専用ローターの軽快さと、HGギアのバランスが最高。カゴスペシャルⅣとの組み合わせで、青物からヒラスズキまで幅広く対応。
パワー重視のサブ機 → ツインパワーSW 8000PG
ステラSW 8000HGの予備機兼パワーモデル。パワー重視の釣りや、ステラを使いたくない状況で活躍。コストパフォーマンスに優れ、性能はステラに迫る。
近距離・過酷環境 → スフェロスSW 6000HG
近距離のカゴ釣りや、荒天時の使用。汐来坊2との組み合わせで機動力を活かした釣りに最適。気兼ねなく使える実戦派リール。
番手とギア比の選択理論
カゴ釣り用リールを選ぶ際、番手とギア比は非常に重要です。
番手の選び方
6000番
- PE2〜2.5号クラス
- 近距離カゴ釣り、大型グレ
- 軽量で疲れにくい
8000番
- PE3〜4号クラス
- カゴ釣りのスタンダード
- 中型青物からヒラマサまで対応
14000番
- PE6号以上
- 大型ヒラマサ、マグロ類専用
- 最大のパワーとライン容量
ギア比の選び方
PG(パワーギア):ギア比4.8〜4.9
- 巻取長:94〜106cm
- メリット:巻き上げパワーが強い、大物とのパワーファイト向き
- デメリット:手返しが遅い
HG(ハイギア):ギア比5.6〜5.7
- 巻取長:101〜107cm
- メリット:パワーとスピードのバランスが良い、汎用性が高い
- デメリット:特になし(万能タイプ)
XG(エクストラハイギア):ギア比6.2
- 巻取長:119cm
- メリット:手返しが速い、プラッギングに最適
- デメリット:パワーがやや劣る
私は、汎用性の高いHGと、パワー重視のPGの2種類を揃えることで、あらゆる状況に対応しています。
メンテナンスと長期使用
高価なステラSWやツインパワーSWを長く使い続けるためには、適切なメンテナンスが不可欠です。
日常のメンテナンス
釣行後は必ず真水で洗浄 磯釣り後は、リール全体を真水で洗い流します。特にラインローラー部分は念入りに。海水が残ると、動作不良の原因になります。
ドラグの締め込みを緩める 保管時は、ドラグを完全に緩めておきます。締め込んだままだと、ドラグワッシャーが圧縮されたままになり、性能が劣化します。
定期的な注油 ハンドルノブやベールアームの可動部に、適宜注油します。シマノ純正のメンテナンスオイルを使用することを推奨します。
オーバーホールの推奨
ステラSWクラスのリールは、年に1回、または50〜100釣行に1回のオーバーホールを推奨します。シマノの正規メンテナンスサービスを利用することで、新品同様の状態に戻すことができます。
特にラインローラー部は、防水性能が向上したとはいえ、定期的なグリスアップが重要です。オーバーホール時に内部の状態をチェックしてもらうことで、長期使用が可能になります。
まとめ
カゴ釣りは、大型青物を相手にするハードな釣りです。ステラSW 14000PGは大型ヒラマサ専用の最高峰として、ステラSW 8000HGは主力の万能機として、ツインパワーSW 8000PGはコスパ最強のサブ機として、スフェロスSW 6000HGは実戦派のエントリーモデルとして。
この4機種があれば、あらゆるカゴ釣りシーンに対応できます。状況に応じて最適な一本を選び、大型青物との格闘を存分に楽しんでください。
【全5回連載を振り返って】
第1回から第5回まで、私のフカセ・カゴ釣りタックルを詳しくご紹介してきました。
- 第1回:チヌ釣り用ロッド(アテンダー3 0号・0.6号、チヌ競技スペシャルⅣ)
- 第2回:グレ釣り用ロッド(アテンダー3 1.5号、インテッサG5 1.75号)
- 第3回:カゴ釣り用ロッド(カゴスペシャルⅣ、ヒラマサ天剛2、汐来坊2)
- 第4回:フカセ釣り用リール(BBXテクニウム C3000DXG)
- 第5回:カゴ釣り用リール(ステラSW 14000PG・8000HG、ツインパワーSW 8000PG、スフェロスSW)
それぞれのロッドとリールには明確な個性があり、状況やターゲットに応じて使い分けることで、釣果が大きく変わります。最高のタックルを揃えることは、最高の釣りを楽しむための第一歩です。
この連載が、皆さまのタックル選びの参考になれば幸いです。良い釣行を!
【連載全5回】
- 第1回:チヌ釣り用ロッド編
- 第2回:グレ釣り用ロッド編
- 第3回:カゴ釣り用ロッド編
- 第4回:フカセ釣り用リール編
- 第5回:カゴ釣り用リール編(本記事)





