【連載第4回】私のフカセ・カゴ釣りタックル全公開 – フカセ釣り用リール編

第4回は、フカセ釣りの心臓部とも言えるレバーブレーキリールについてご紹介します。私が使用しているシマノ BBXテクニウム C3000DXGは、レバーブレーキリールの最高峰に位置するモデルです。

なぜフカセ釣りにレバーブレーキリールが必要なのか

フカセ釣りを始めたばかりの方は、「なぜ普通のスピニングリールではダメなのか?」と疑問に思うかもしれません。レバーブレーキリールの真価は、大型のチヌやグレとのファイト時に発揮されます。

レバーブレーキリールの3つのメリット

1. 糸ヨリが発生しない 通常のドラグシステムで糸を出すと、糸にヨリ(ネジレ)が発生します。細いハリスを使用するフカセ釣りでは、この糸ヨリは大敵です。レバーブレーキはローターを逆回転させることで糸を出すため、糸ヨリが発生しません。

2. 瞬時に竿を立て直せる 大物が強烈に突っ込んだ時、竿が「のされた」状態(竿が水平になってしまう状態)になることがあります。この状態では竿の弾力が活かせず、ハリス切れやバラシのリスクが高まります。レバーブレーキなら、レバーを引いて瞬時に糸を出し、すぐに竿を立て直すことができます。

3. 細かな糸の出し入れが自在 魚の走りに合わせて、必要なタイミングで必要な量だけ糸を出す。この微妙なコントロールが、レバーブレーキの真骨頂です。ドラグだけでは不可能な、繊細なやり取りが可能になります。

シマノ BBXテクニウム C3000DXG – 最高峰の選択

【基本スペック】

  • 番手:C3000
  • ギア比:6.6
  • 自重:250g
  • 最大ドラグ力:10kg
  • 最大ブレーキ力:10kg
  • 巻取長:98cm/ハンドル1回転
  • ベアリング数:16+1
  • 糸巻量:ナイロン 2.5号-180m、3号-150m、4号-100m / PE 1号-400m、1.5号-270m、2号-200m
  • ハンドル長:50mm

2021年にフルモデルチェンジしたBB-Xテクニウムは、シマノのレバーブレーキリールの最高峰として君臨しています。私が使用しているのは2021年モデルですが、2024年には限定カラーの「ファイアブラッド」も登場し、さらに注目を集めています。

SUTブレーキⅡ – 革命的な進化

BB-Xテクニウムの最大の特徴は、SUTブレーキⅢ(2021年モデルではⅡ)の搭載です。SUTとは「Silent Ultra Twin」の略で、シマノが開発した画期的なレバーブレーキシステムです。

従来のレバーブレーキとの決定的な違い

従来のレバーブレーキリールは、レバーを引いてローターを逆回転させる際、ハンドルも一緒に逆回転していました。このハンドルの逆回転が「ブルンブルン」という振動を生み、ロッドを持つ手にも振動が伝わって、竿を立て直す動作の妨げになっていました。

SUTブレーキの革新

SUTブレーキは、レバーを引いてローターを逆回転させても、ハンドルが逆回転しない構造になっています。これにより、以下のメリットが生まれます。

  1. 振動がなくスムーズな糸出し:ハンドル逆回転の振動が排除され、瞬時に体勢を立て直せる
  2. 軽い力でラインを送り出せる:ハンドルの慣性抵抗がないため、従来より軽い力で操作可能
  3. より繊細なライン放出調整:操作レスポンスが向上し、微妙な調整が可能に

“漕ぎ式”という隠れたメリット

シマノインストラクターの平和卓也氏が発見した、開発陣も予測していなかった長所があります。それが「漕ぎ式」と呼ばれる特性です。

SUTブレーキタイプのハンドルを正転方向に素早く巻くと、ローターが惰性でクルクルと回り続けます。これは自転車のペダルを強く踏み込んだ時、その後も車輪が回り続ける様子に似ています。

漕ぎ式のメリット

  • 仕掛けを回収した時、仕掛けの長さを微調整しやすい
  • ハンドルを巻かなくても糸が巻き取られるため、手元で仕掛けをさばきやすい
  • 手返しがアップテンポになり、リズムが生まれる
  • 1日に何百投もする釣りで、疲労軽減につながる

投入と回収を繰り返すフカセ釣りでは、この漕ぎ式の機能が想像以上に便利です。仕掛けに気を使う部分が減り、釣りに集中できるようになります。

HAGANEコンセプトの採用

BB-Xテクニウムには、シマノの誇る「HAGANEコンセプト」が全面的に採用されています。

HAGANEボディ フルマグネシウム製のボディは、高剛性でありながら軽量。下位機種のハイパーフォースが樹脂とマグネシウムのハイブリッドであるのに対し、テクニウムはフルマグネシウムボディで剛性がさらに向上しています。

HAGANEギア 冷間鍛造により製造された超高強度ギアは、耐久性が極めて高く、長期間使用しても巻き心地が変わりません。大型グレの強烈な引きにも、ギアが歪むことなく対応します。

NEW MGLローター マグナムライトローターは、回転慣性を低減しながら剛性を向上させた設計。軽量かつ強靭で、大物とのやり取りに大きなアドバンテージをもたらします。

Xプロテクトによる耐久性

海水の浸入を防ぐXプロテクトにより、過酷な磯釣り環境でも高い耐久性を実現しています。特にレバーブレーキ機構部への海水侵入を防ぐ設計は、長期使用において重要なポイントです。

磯釣りは常に海水飛沫にさらされる環境です。従来のリールは内部に海水が浸入し、錆びや動作不良の原因になっていました。Xプロテクトにより、この問題が大幅に改善されています。

チタンワンピースベール

回転慣性を低減し、ローターの剛性を向上させた軽量かつ強靭なチタンワンピースベールを搭載。従来の分割式ベールアームと比べ、強度と信頼性が向上しています。

ベールアームの破損は、磯釣りでは致命的なトラブルです。ワンピース設計により、破損リスクが大幅に低減されました。

C3000DXGというサイズ選択

C3000番の適性

C3000番は、チヌとグレのフカセ釣りに最適なバランスを持つサイズです。

糸巻量の絶妙なバランス

  • ナイロン3号-150m:グレ釣りの標準的な仕様
  • ナイロン2.5号-180m:チヌ釣りに最適
  • PE1.5号-270m:PEラインでの使用も可能

磯釣りでは、大型魚が掛かった際に100m以上走られることもあります。C3000番の糸巻量は、このような状況にも余裕を持って対応できます。

自重250gの軽量性 一日中竿を持ち続けるフカセ釣りでは、リールの軽さは重要です。250gという自重は、C3000番の糸巻量としては非常に軽量で、疲労軽減に大きく貢献します。

DXGというギア比の意味

DXGは「Double Extra Gear」の略で、ギア比6.6を意味します。これはパワーとスピードを両立するバランスの良いギア比です。

ギア比6.6のメリット

  • ハンドル1回転で98cm巻き取れる十分なスピード
  • 大型魚とのやり取りでも力負けしないパワー
  • 手返しと操作性のバランスが最良

ちなみに、テクニウムには他に以下のギア比も用意されています。

  • C3000DXXG(ギア比7.2):競技や手返し重視の釣行向け
  • C4000D TYPE-G(ギア比4.6):ローギアでパワー重視の大物狙い

私はバランスの良いDXGを選択していますが、釣りのスタイルに応じて選ぶことができます。

実釣での使用感

チヌ釣りでの性能

チヌ釣りでは、繊細なアタリを捉え、掛けた後の強烈な引きに対応する必要があります。BB-Xテクニウムは、この両方に完璧に対応します。

アタリがあった瞬間のアワセは、ハンドルのレスポンスの良さが重要です。SUTブレーキⅡの採用により、ハンドルの動きが非常にスムーズで、即座にアワセを入れることができます。

掛けた後、チヌが突っ込んだ瞬間にレバーを引けば、瞬時に糸が出て竿を立て直せます。この操作の滑らかさは、従来のレバーブレーキリールとは別次元です。

グレ釣りでの信頼性

グレ釣り、特に大型グレや尾長グレとのやり取りでは、BB-Xテクニウムの真価が発揮されます。

50cmオーバーのグレの引きは想像を絶する強さです。最初の突っ込みで竿がのされそうになった瞬間、レバーを引いて糸を出し、即座に竿を立て直す。この一連の動作が、ハンドルの逆回転振動なしで行えることの価値は計り知れません。

HAGANEギアの強度は、長時間のファイトでも安心感を与えてくれます。ギアが歪むことなく、最後まで安定した巻き心地を保ちます。

一日中使える快適性

250gという軽量性と、巻き心地の滑らかさにより、一日中使っていても疲れにくいのが大きな魅力です。

特に手返しの多いチヌ釣りでは、仕掛けの投入と回収を何十回、何百回と繰り返します。この時、漕ぎ式の特性により、仕掛けのさばきが楽になり、リズムよく釣りができます。

メンテナンスについて

レバーブレーキリールは、通常のスピニングリールよりも複雑な機構を持つため、メンテナンスが重要です。

日常のメンテナンス

釣行後は必ず真水で洗浄 磯釣り後は、必ずリール全体を真水で洗い流します。特にレバー部分は念入りに。海水が残ると、動作不良の原因になります。

レバーの動きをチェック 洗浄後、レバーの動きがスムーズかを確認します。引っかかりや渋さがある場合は、早めのメンテナンスが必要です。

ドラグの調整 ドラグの締め込み具合を確認し、必要に応じて調整します。磯釣りでは、ドラグとレバーブレーキを併用するため、ドラグ設定も重要です。

オーバーホールの推奨

BB-Xテクニウムクラスのリールは、年に1回、または50〜100釣行に1回のオーバーホールを推奨します。

シマノの正規メンテナンスサービスを利用することで、新品同様の状態に戻すことができます。高価なリールだからこそ、長く大切に使いたいものです。

2024年限定モデル「ファイアブラッド」について

2024年には、BB-Xテクニウムの限定カラーモデル「ファイアブラッド」が登場しました。

ファイアブラッドの特徴

  • 情熱的な赤いデザイン
  • ハイレスポンスドラグ仕様のスプールを標準装備
  • 瞬間的なドラグ性能が格段に向上

基本性能は通常のテクニウムと同じですが、ハイレスポンスドラグスプールの標準装備が大きな違いです。魚のファーストランなど、瞬間的な引きに対するドラグ性能が向上しています。

限定モデルのため入手は困難ですが、デザインと性能の両面で魅力的な選択肢です。

下位機種との比較

BB-Xハイパーフォース

BB-Xハイパーフォースは、テクニウムの下位機種でありながら、SUTブレーキⅡを搭載しています。価格は約半額で、SUTブレーキの恩恵を受けられるコストパフォーマンスに優れたモデルです。

主な違い

  • ボディ:ハイパーフォースは樹脂とマグネシウムのハイブリッド、テクニウムはフルマグネシウム
  • ベアリング数:ハイパーフォースは11+1、テクニウムは16+1
  • 巻き心地:テクニウムの方がより滑らか
  • 剛性:テクニウムの方が高剛性

初めてレバーブレーキリールを購入する方や、コストを抑えたい方には、ハイパーフォースも excellent な選択肢です。

SUTブレーキ非搭載モデルとの違い

BB-Xラリッサやデスピナなど、SUTブレーキを搭載していないモデルも存在します。

従来型レバーブレーキの特徴

  • ハンドルが逆回転する
  • 価格が安い
  • シンプルな構造で故障が少ない

SUTブレーキの革新性を一度体験すると、従来型には戻れないという声が多数あります。しかし、従来型も十分に実戦的で、多くのアングラーに愛用されています。

まとめ

BB-Xテクニウム C3000DXGは、フカセ釣り用レバーブレーキリールの最高峰です。SUTブレーキⅡによる革新的な操作性、HAGANEコンセプトによる高剛性と耐久性、そして軽量性と巻き心地の良さ。すべてが最高水準で実現されています。

チヌ釣りからグレ釣りまで、このリール1台があれば、あらゆるフカセ釣りに対応できます。価格は高額ですが、その価値は十分にあります。一生モノのリールとして、長く付き合っていける相棒です。

次回の第5回では、カゴ釣り用リールについて詳しくご紹介します。ステラSW、ツインパワーSW、スフェロスSWの3機種を、番手とギア比の違いを含めて徹底解説します。お楽しみに。


【連載予定】

  • 第1回:チヌ釣り用ロッド編
  • 第2回:グレ釣り用ロッド編
  • 第3回:カゴ釣り用ロッド編
  • 第4回:フカセ釣り用リール編(本記事)
  • 第5回:カゴ釣り用リール編

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